精神障害者交通運賃割引をめぐる自治体議会の動き

本ブログでは従前から、精神障害者に対する、鉄道などの交通運賃の割引が他の障害種別に比べてなかなか進まないことを訴えてきているが(当該記事はコチラ)、最近になって多くの地方自治体が国、政府に対する当該意見書を相次いで可決しているのである。動きが出てきたという感じに思えたので、本稿を起こしてみた。

このことは、某革新政党が自宅にポスティングしているチラシで知ったのだが、筆者の居住している東京都の議会では全会一致でこの意見書を可決したという。その他の多くの自治体でも、全会一致で可決しているようである。したがって、この革新政党が動いていたとしても、この政党だけの手柄ではないと考える。

精神障害の一当事者としては、状況が一歩進みつつあることから、歓迎したいことである。

この意見書の正式なタイトルは、「精神障害者に対する公共交通機関の運賃割引の適用を求める意見書」である。
障害者基本法、障害者の権利に関する条約の批准、そして障害者差別解消法が2016年4月1日に施行されたことを根拠にしているが、現存する障害者割引制度は身体と知的障害者のみの割引で精神障害者への適用が極めて少なく、大きな格差があるとしている。
よって、国会及び政府に精神障害者にも公共交通機関の割引制度を適用するように求めるというのが、意見書の要旨である。

東京都議会では2016年6月15日に可決されたが、他の多くの自治体(奈良県議会:2016年3月25日、福岡県議会:2016年3月23日、宮城県議会:2009年12月15日、札幌市議会:2013年6月12日、他)でも2016年3月中に可決されており、現在進行中の自治体もある(愛知県議会:2016年7月5日)。以前にもこの趣旨の意見書を地方議会が可決したこともあるようであるが、言い回しの若干の違いがあれ、同じ趣旨の意見書が多くの議会でほぼ同時に可決されているというのはいまだ聞いたことがない。
余程急迫した事態に違いない。

意見書には、主治医の意見書など多くの意味があるが、ここでいう意見書とは、地方自治法99条に定められた手続きで、国会または関係行政庁に提出するための、議会の意思を意見としてまとめた文書のことである。過半数で可決というルールがないため、意見書の可決は結構大変なことであると聞く。
意義ある行動であるはずだが、法的拘束力がないため、意思表示としては意味があっても強制力がないため効果が限定的という面がある。
それでも、今回は同時期に多くの地方自治体から同一内容の意見書が出てきたことから、国に対する強い意思表示になると期待する。

身体障害者手帳制度や知的障害者(手帳)制度(療育手帳)に比べて、精神障害者手帳制度が時期的に出遅れてしまったのがこの問題の始まりかと考えるが、現在は障害者差別解消法が施行されている時代である。法律で三障害の格差解消はうたわれていないが、その法律の理念を考えると、精神障害者手帳だけ制度の適用を受けられないことは、(明確な定義はないが)至って差別的と考える。本稿で述べている運賃割引制度に限らず、いかなる差別の解消を求める次第である。

当事者としては家族会の動きがいまいち見えにくいのだが、今回の動きに至ったのは、おそらく家族会の継続的な働きかけが大きかったのではないのかと思う。

当事者としては、通院や通勤、福祉施設への通所で公共交通機関の利用は欠かせない。割引が受けられないことで交通費を負担できず、家に引きこもっては、一億総活躍社会の実現は遠くあり得ない。

この動きや、障害者差別解消法施行の動きを見据えてか、多くの良心的な交通事業者(大都市圏以外が多い)はすでに精神障害者手帳保持者への運賃割引の提供を開始している。筆者が精神障害者手帳で実際に割引適用された鉄道会社は、数は多くないが、将来別稿を立ててご紹介したい。

一例として、岩手県の三陸鉄道や愛知県の名古屋臨海高速鉄道株式会社(あおなみ線)では、2016年春から割引適用が開始されたが、特にあおなみ線では、

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の趣旨をふまえ、既に実施している身体障害者・知的障害者の方々への割引運賃を精神障害者の方々に対しても適用します。

と告知している。立法趣旨を真面目にとらえた良い例だと考える。

一方で、JR各社はいまだに導入に消極的である。福祉割引制度は国でやってくれと他人事である。大都市圏の民鉄会社も様子見といった感じだろうか。
一当事者的には、割引の財源が国庫であってもなくても実はあまり関係はないのだが、国が割引財源を交通事業者に補填するよりは、鉄道会社が独自に経理して、国に協力する形で好意として割引を提供したほうが、上記立法趣旨と福祉という理念に叶うと考える。

最後にこの問題については、筆者の単なる個人的願望ではなく、客観的に見て、市民の代表である議会レベルでも支持され、今後推進されるべき政策であるということを申し上げたい。

(参考資料:東京都議会ホームページ https://www.gikai.metro.tokyo.jp/opinion/2016-2/01.html、奈良県議会ホームページ http://www.pref.nara.jp/42965.htm、福岡県議会ホームページ http://www.gikai.pref.fukuoka.lg.jp/honkaigi/kaketsu-28032306.html、宮城県議会ホームページ http://www.pref.miyagi.jp/site/kengikai/ikensho2111.html、札幌市議会ホームページ https://www.city.sapporo.jp/gikai/html/documents/25_2t_05.pdf、広島市議会ホームページ http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/gikai/contents/1267602690028/index.html、あおなみ線ホームページ http://www.aonamiline.co.jp/pc/pdf/seisinn.pdf、三陸鉄道ホームページ http://www.sanrikutetsudou.com/?p=4610)

コメント

  1. 気分ハイ より:

    筆者より:
    すでに交通割引が実現されている身体障害者(特に内部障害者)と知的障害者においても、割引実現のためには家族会が全国運動を発信して、議会を動かして全国の議会で意見書を可決して、その後念願の割引が実現したというプロセスがあったことを、以下の文献(精神障害者の家族会)から知りました。

    http://seishinhoken.jp/attachments/view/articles_files/src/c2b1eddb4e6b66ca906109cd79ac074d.pdf

    本稿に記載した意見書可決の出来事も、これらと同じステップを踏んでいるため、精神障害者に対する交通運賃割引も近いか?と期待させられます。
    しかし、現在、JR各社をはじめとする交通事業者への国土交通省の監督・コントロールが昔よりは弱くなっている印象があります。
    そんなわけで不安を覚えるわけですが、今度こそ政府が強力なイニシアチブを発揮して、三障害の不平等の解消を図ってほしいものです。