障害者枠就労を実現するための考え方とステップ【精神障害者用】(前半)

障害者が就職し、一般企業(特例子会社を含む)で働くにあたって、障害種別から検討されることがあるが、本稿は精神障害者向けのブログであることから(精神障害者手帳を保持する発達障害者を含む)、精神障害者向けの一つの考え方とそのステップを扱うこととする。総論、各論でいえば、ごくごく総論の部分に当てはまる位置づけである。
本稿はあくまでも筆者の個人的な見解であって、一当事者目線での記事である。実際には様々な考え方があり、議論もあろうかと思うので、その点を留意されたい。また、文字数が限られているので、要約となることもご了承いただきたい。

最初に言いたいのは、本稿の内容を実践するためには、前提として働く意欲があることが必要なことは言うまでもない。

当事者によっては順番が必ず本文通りとなるわけではなく、前後する場合もあるはずなので、併せて了承いただきたい。

(免責事項)

本稿の内容は、就労もしくは就職活動の成功を保証しているわけではありません。実際には個別の検討が必要なことをご了承のうえ、あくまでも一般論としてお読みください。

1.診断名確定・障害受容(当事者本人・親族)【必須】

大きなストレスを受けた後に気分が落ち込むとか、疲れやすくて動けなくなるなどといった症状や、コミュニケーションがうまくいかなくて社会生活に障害があるといった問題がある場合には、精神科(児童精神科を含む)や心療内科を受診して、症状や障害に対する診断名を受けることを前提として、本稿のお話が始まる。

精神疾患(障害)や発達障害を当事者自身が受け入れることが、本稿でのプロセスの中で一番大変なことであると筆者は考えている。
当事者本人にしてほしいことは、自身の症状や障害のことをよく勉強してほしいということである。そして、その症状から過去に就労シーンで不自由したことがないかどうかを検討してみよう。
図書館でその本を借りたり、本を購入して勉強することで、例えば過去勤務していた職場でうまくいかなかった原因について一定の気付きを得られるかと思う。この流れのことを、障害を受け入れるということで、「障害受容」というのだが、症状は人それぞれなので、受容まで時間がかかることがある。

この振り返りが先に進むに当たって最も重要なのであるが、これは本人にとっても厳しい作業であるし、ましてや本人の家族や親戚などの親族が理解するのはそれまた至難の業である。精神障害や発達障害は、外見から不自由が分からないため、他人からはまず理解を得られない。
筆者も、周囲の親族や友人にカミングアウトしたとしてもまず理解されずに偏見から迷惑がられ(敬遠され)、筆者の周りから人が離れていくだけだった。

しかし、障害者枠就労を実現させるためには、家族や身近の人の理解がかなり重要だったりする。就労までの期間も健常者の就労以上にかかるし、経済的な課題も深刻だからである。

なお、このステップからつまづいてしまうような場合には、各都道府県にある「障害者職業センター」を利用するのが有効かと思う。障害受容につながる検査などを受けられるし、いろいろな社会資源を紹介してもらえる場合がある。

このことを飲み込めた時点で、以下のステップに進むことになる。

2.自立支援医療受給者証の申請など経済的課題の検討【必要な場合】

精神科にかかることは、通常は数年単位以上の長期間に及ぶものであり、医療費を負担することは並大抵なことではない。そのため、精神科の通院と服薬に関しては、公的な支援制度が存在する。

「自立支援医療(精神通院)」という制度で、外来通院が対象になる(入院は対象外)。高額所得者以外の人であれば、医療費の自己負担が原則1割ですむ制度である。
対象疾患は、てんかんを含む大部分の精神疾患(アル中や薬物系中毒を含む)および発達障害であるが、症状が具体的に該当するかどうかは、かかっている精神科の主治医に確認されることをお勧めする。

実際の申請は、市区町村の障害福祉課(一部の区市では、保健所・保健センター)で行う。この際に主治医の「診断書」(所定様式)が必要になるので、あらかじめ主治医に書いてもらう同意を得ておこう。
保健所は、受診する医療機関に困った場合など、相談にも応じてもらえる行政機関である。

中には、症状を障害と認めずに診断書の記入をためらう医師もいると聞くが、筆者個人的には受診を避けたいタイプの医師である。精神科の主治医の仕事には、各種診断書を患者のために作成することも含まれるので、福祉的な視点からためらわずに作成してもらえる医師を探し出すのが、患者自身の務めでもある。

なお、自立支援医療の診断書の様式は、後述する「精神障害者保健福祉手帳(手帳、障害者手帳)」申請のための診断書と大部分が共通した様式なので、自身の障害受容があれば、このタイミングで手帳と同時申請することを強くお勧めする。このやり方では、主治医に書いてもらう診断書が2年に1回だけで済むので、費用的にもおトクである。
ただし、障害者手帳の申請は初診から6か月以上たっていることが要件になっており、発症時に申請できないので、要注意である。それ以前のタイミングでは、自立支援医療のみの申請となる。

当事者に親などの親族がいて、扶養を受けられるかどうかは結構重要な問題で、治療や就労までの期間、安心して生活できるかどうか、経済基盤の要素になる。本人は疾病・障害の状態であり、つまりはすぐに働けない状態で普通は収入があるはずがないので、生活には親族や社会の助けが必要になるわけである。
雇用保険の失業給付(あるいは傷病手当金)をはじめ、各種社会保険などの給付を受けられる場合は利用することをまずは考えたうえで、それでも資産、扶養親族など何もなければ、最悪公的扶助を受けて、以下のステップを歩まなければならない。

3.就労支援機関の要否検討(障害福祉サービス利用の検討)

ここまできて、市区町村の障害福祉課や保健所を訪れ、相談に至ったわけであるが、同時に、支援者としての就労支援機関を利用するかどうかを相談することを勧めたい。

就労について相談するのは基本ハローワークなのであるが、ハローワークも一役所(行政機関)であり、いつでも利用者に対して必要な情報をくれるわけではない。行政機関一般のこととして、利用者自身が得たい情報について相談し、受けたいサービスを申請するという大原則があり、決してお膳立てしてくれることはない(要求したことしか提供されない原則)。
何を言いたいのかというと、ハローワークに相談に行く際には、自身の状況をしっかりと把握し、それをしっかりと説明できること、必要な情報を自ら引き出す姿勢が必要である。筆者はこれが苦手で、特に発達障害者にとっては至難の業なのであるが。

ハローワークでも状況を説明し、うまく把握してもらえれば、必要な社会資源につなげてくれるはずと信じている(これがうまくできず、使えない機関と思っている人が多いかと思う)。

筆者がお勧めしたいのが、障害者の就労について悩みを相談したり、どこか機関につなげてほしいという場合には、上述の「障害者職業センター」に相談することである。東京都の場合は、台東区上野と立川市にセンターがある。相談と職業適性検査を行ったうえで、必要と判断されれば適切な支援機関を紹介してもらえるかと思う。

その結果、おそらくは、障害福祉サービスの中でも、まずは「就労移行支援」制度を利用することを勧められるかと思う。その場合、申請窓口が市区町村の障害福祉課や保健所となるため、改めての相談と申請が必要である。

就労支援機関が必要かどうかは、症状や職歴の有無(在職中か離職中か)、治療期間、ブランク期間はじめ多くの項目から判断されるので、本稿で一概に述べられない。ごく大雑把に言えば、発達障害など先天的な障害の場合、社会人経験がない場合など特に支援が必要なケースについては、支援機関を利用する価値があるかと思う(筆者の所感として、健常者と大して変わらない軽い精神疾患であれば、支援機関における長期間の訓練に費やす時間と生活費用が無駄になると思うので、利用しないで、再発しない状態から直ちに就職活動をしてもよかろう)。

4.精神障害者福祉保健手帳の取得【オープン就労では必須】

自分自身の障害の受容ができて、一障害者として、障害者枠での「オープン就労」を目指そうと決心ができたのなら、まずは障害者手帳が必要になる。会社への求人応募の際にも、障害者手帳のコピーを応募書類の一つとして添付することになる。

下記6.でもお話しするが、オープン就労とは、障害を会社側に明かして就労することである。
それに対する概念は、「クローズド就労」、つまり障害を隠した一般的な就労のことである。その場合は、健常者と同じ土俵に立つことになる(配慮を期待することはできない)。

手帳の話に戻るが、上記2.でも説明した通り、精神障害者福祉保健手帳の場合は、自立支援医療(精神通院)の申請窓口と同じである。

精神疾患の初診から6か月以上症状が良くならず、つまりは症状が残って障害といえる状態になった場合には、障害者手帳取得の対象になる。
成人が発達障害と診断された場合、主治医が障害者手帳の要否を確認してくれる場合がある。成人の発達障害も、精神障害者手帳の対象である(IQに問題がない場合。IQが低い場合は療育手帳(知的)の取得対象となる)。
いずれのケースでも、かかっている主治医とよく相談されたい。

手帳の有効期限は、他の障害と違い、2年間であり、都度更新が必要となる。なぜなら、その途上で障害が治癒する可能性があるためである。(それだから、往々にして精神障害の受容が難しくなるのであるが。。。一方で、発達障害の場合は治癒という概念はないかと思うが。)

筆者は税金の減免が契機となって、手帳を初めて申請して取得した。今考えれば、それは単なるきっかけで、結局は現在オープン就労に結び付いたので、良かれということになる。
語弊があるかもしれないが、障害者手帳を社会資源の一つとして、ツールとしての活用ができるかどうかは、世渡りの上で結構肝心な点であるかと思う。

もちろん、ツールととらえるかどうかは、各当事者の考え方次第で、強制するものでは全くない。

ただし、本稿において障害者枠でのオープン就労を目指しているのであれば、障害者数算定の基礎として、障害者手帳の取得が法律上の要件になっているため、ツールとして必須となることは留意されたい。

それでも、手帳を取るかどうかは自身の考え方にもよるし、大きな問題なので、主治医との相談の上で、各自判断されたい。ただし、手帳を実際に取得したいと思い、手帳が十分取得できる症状・状態であっても主治医が診断書を書いてくれない(渋る)ような場合、筆者的には当事者への配慮不足だと感じる。精神疾患の場合、福祉的な視点において患者のことを見てほしいかと思う。

5.障害基礎(・厚生)年金の請求・受給【オプション】

障害者のための経済的なサポート制度が、障害年金である。

障害年金の各論的な説明は専門的で、かなり難しいので、本稿では扱わないこととしたい。
実際問題、障害年金の裁定請求、受給は、発症・初診日の年齢、初診日に厚生年金に加入していたかどうか(会社で働いていたかどうか)、症状の程度や経過など、多くの要素が複雑に絡み合っているからである。

障害者としてオープン就労を目指すのであれば、障害年金を受給しながらでも不可能ではない。なぜならば、働く土俵は健常者とは同じ土俵ではなく、障害者として何らかの配慮がある保護的な土俵で働くことになるからである。

保護的な土俵上という違いがある以上、給与水準は一般的には健常者よりも低く、その低さを障害年金受給で補うという考え方は可能なので、要件が揃っている当事者は受給しても良いと考える。

障害年金の受給手続き(このことを「裁定請求」と呼ぶ)は、住んでいるところの社会保険事務所で行うが(自分でもできる)、困難なケースであれば、社会保険労務士に相談する価値がないとは言い切れないと思う。

この場合、年金上の障害等級が重いと実際に働いた場合に矛盾が生じ、年金が止まってしまうという問題が考えられる。停止されてしまうと経済上の痛手となるため(就労継続の妨げにもつながる)、必要ならば専門家に相談したい。

以上で前半は終わりとなるが、ここまでの1.~5.のステップで、体調が回復して安定し、会社の勤怠に影響しないまでになっていることが必要である。これが存外高いハードルなのであるが。。。

(この続きについては、後半をご覧ください。→ コチラ

6.障害オープン(開示)かクローズド(非開示)かの検討
7.会社への配慮点の確定【オープン就労】
7-1.職場体験実習の経験【支援機関所属の場合のみ】
8.ハローワークへの求職登録・求人検索(民間求人サイトも利用可)
9.応募書類の作成
10.求人検索および応募先の検討
11.実際に就職活動を行う