気分障がい当事者の結婚生活は難しいのか?

筆者は現在四十代半ばの年齢であるが、今のところ、結婚生活のチャンスには恵まれていない。たとえその機会があったとしても、精神障がいのある当事者ということで話がなかった状態になってしまっていた。その結果、今まで婚姻経験がなくて、独身状態が続いている状態である。
健常者でも出会いと恋愛・結婚がたやすいものでない中、果たして精神障がいの(本稿では、双極性障がいなどの気分障がいの)当事者がパートナーを見つけて、結婚生活をしていけるものかどうか、経済面と離婚率の面から考えてみたい。

(画像出所:ぱくたそ)

筆者は気分障がいの当事者であるが、一男性として実際に相手を支えていくことを考えると、結論としては、かなり大変かなと思っている。
経済面で余裕がなくて喧嘩が絶えないだろうし、もし結婚できたとしても、気分の揺れのために、些細なことで相手とすれ違い、離婚のリスクが通常よりも高いのかと考えている。
一般的に、年齢的にも四十代以降はあまりマッチングしやすい状況とも言えないので、障がいがあっては尚更大変である。

今日、2018年元日付の某新聞の朝刊を読んだら、「代理婚活」花盛り。。。という記事を見つけた。ただでなくとも、結婚が大変な時代であるのに、という感じであるので、尚更なのである。(親が結婚相手を探すって?汗)

本稿では、統計の数値を見た上で考察してみたいが、当事者やその家族にとって耳障りのいいお話ではないので、嫌だと思ったらスルーしていただきたい。

経済面からの結婚の困難さをデータから考える

まず前提として、就労している精神障害者の雇用形態別の割合を、障害者雇用実態調査(2013年)の結果から示したい。
精神障害者にあっては正社員の割合が多くなく、一般的に正社員といわれる無期正社員の割合は、全体の32%である。契約社員などの非正社員の割合が高く、有期非正社員の割合は47.8%と無期正社員の約1.5倍の割合である。
これは、ハローワークなどの求人案件を見ても正社員のものが少なく、大多数は契約社員の雇用形態の募集であることからも想定できる範囲のお話である。

就労している精神障害者には非正規社員が多いということが、データから裏付けられている。

(出所:厚生労働省 平成25年度障害者雇用実態調査 p16 からグラフを自作)

次は、別の角度から、雇用形態や(男性の)収入面から結婚している割合にどのような関係があるか、少子化社会対策白書(2017年)のデータを示したい。

下図「男性の就労形態別有配偶者率」を見ると、25歳以上の正社員の男性の結婚している割合が高く、契約社員などの非典型雇用では、その割合が低くなっている。特に30歳以上の層では、非典型雇用層の有配偶者の割合は23.3%と、正社員の57.8%の約40%程度と低い割合となっている。
つまり、非正規社員(非典型雇用層)の結婚率は正社員に比べて、それだけ低いということが言える。

(出所:内閣府 平成29年版少子化社会対策白書全体版 p20)

また、男性の収入面から見てみても、下図では結婚率が比較的高い35歳-39歳の層でも、結婚率が50%を超える年収額が250-299万円を超える層である。(男性の年収が500万円を超えると、この結婚率が約80%と跳ね上がり、結婚しやすい層であることが分かる。)
年収が比較的低い契約社員などの非正規社員ではなかなか結婚に踏み切れずに、結婚率が低い状態になっていることが推察できる。

(出所:内閣府 平成29年版少子化社会対策白書全体版 p20)

つまり、非正規社員の割合が高い精神障害者(特に男性)の結婚率が低いということである。
男女差別と非難を受けるかもしれないが、精神障がいのある人でも女性の場合は、理解ある他の男性と結婚して経済的に支えてもらうという図式が考えられる。逆に男性に障がいのある場合、収入が低くて相手となる女性を支えられないということで、なかなか結婚に踏み切れないのではなかろうか。

精神障がいの当事者に限らない話だが、たとえ収入が高くなくても低所得層への経済面の子育て支援や将来の社会保障を約束することで多くの子どもを育てられる社会にならない限り、少子化がさらに進行して、将来の国づくりが致命的なことになると考える。
また、結婚を当事者自身の問題と片付けずに、結婚したい人については公的・社会的な支援でマッチングさせて、積極的に結婚に結び付けていくこと、支えあうことがメリットの多いことととして仕向けて行くような施策が有効と考えている。(結婚は経済面だけのことではないので、簡単なお話ではないのだが。)

離婚率から考えられることはあるか(特に双極性障がい)

気分障がい、特に双極性障がいの当事者の離婚率が高いことがよく言われる。
筆者が付き合おうとした女性とも些細なことで喧嘩したりすれ違ったりして、結局深く付き合う段階に行かないということが多かった。たとえ結婚に至ったとしても、小さなすれ違いで簡単に離婚に至るのではないかと想定しているわけである。

精神障がい者の離婚率という切り口でデータを探してみたのだが、倫理的な面もあるのか研究が少なく、外国の研究も含めて有効な根拠を見出すことができなかった。
それでも、米国における複数の文献から、パートナーが双極性障がいである場合、夫婦の90%が結局離婚してしまうというということが言われている。
日本では米国ほど離婚率が高くないとはいえ、健常者の夫婦に比べて、双極性障がい当事者の離婚率が健常者の2倍、3倍に上昇するという話も、自身の経験から決して否定することができない。

それでも本当に結婚が大変なのか

多くの文献で言われているのは、双極性障がいの場合は精神科医の診療を受けずに放置しておくと、感情のコントロールができずに怒りが外に向いてしまったり、ギャンブル中毒や薬物乱用に陥って働けなくなるために、人から敬遠されてしまって、日常生活が難しくなるということである。

少なくとも、男女交際という局面になると、治療していたとしても、感情の揺れがパートナーへの態度に現れて、相手のことを振り回してしまうのだと思う。それでは、パートナーが疲れ切って、嫌になってしまう。

逆に当事者本人がその障がいを受容して、治療を受けて服薬を行っていれば、日常生活や(健常者と全く同じ条件というわけにはいかないが)就労も十分に可能である。したがって、社会全体として障がいを受容・理解して、治療管理できるような社会のスキームやサポートがあれば、結婚生活は決して不可能な事ではないと考える。(例えば、一時的に別居して状況を冷却できるシェルターのような施設の設置、心理的なサポートの仕組みの整備など)

ただし、現状では、双極性障がいを含めた気分障がい・精神障がいへの世間の無理解や偏見がひどすぎるので、一筋縄ではいかないかと思う。
その一例として、女性の不満のはけ口の一つである「ガールズちゃんねる」での当該トピックの投稿では、男性の当事者に対する見方が特に否定的で、悲しい気持ちにさせられる。

その辺の根底の意識が変わっていかないと、当事者がいくら運動したとしても、社会のサポートを得て生活していくというのは難しいのかと思う。

【参考資料 References】
– 平成25年度障害者雇用実態調査(厚生労働省)http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000068921.html
– 平成29年版少子化社会対策白書(内閣府)http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2017/29pdfhonpen/29honpen.html
– Bipolar spouse (bipolarlives) http://www.bipolar-lives.com/bipolar-spouse.html
– Managing Bipolar Disorder (Psychology Today) https://www.psychologytoday.com/articles/200311/managing-bipolar-disorder
– ガールズちゃんねる 双極性障害(躁うつ病)の方の吐き出しの場 http://girlschannel.net/topics/1195843/
– Withnews https://withnews.jp/article/f0180101005qq000000000000000W08110101qq000016531A