精神障害者のための確定申告ノウハウ(オープン・クローズド就労の各留意点)

筆者は社会復帰を果たして、今年で2年目になる。つまり、昨年には収入が発生したことになる。
毎年2月から3月は税金の申告の時期であるが、筆者も所得税の確定申告を済ませた。障がいのあるなしにかかわらず、何らかの収入がある以上は、税金の問題からは逃げられないが、障害者として申告する場合は、障害者控除を適用すると節税になることは間違いない。

本稿では、筆者を含めた精神障害者が所得税の確定申告や住民税の申告をする上での留意点、また、障害を開示しないでクローズドで就労している場合の申告上のリスクについて説明していきたい。
障害者の視点で書かれた税金申告についてのリソースが多くないと思うので、参考にしていただければと思う。

所得税の確定申告・住民税の申告が必要かどうか

前年の収入があるか否か、どのような収入種目か、会社での給与収入からの年末調整が済んでいるかどうかなどのいろいろな要因で、申告の要否が決まってくるが、どのような人でも、基本的にはいずれかの申告が必要である。

1.収入がゼロの場合(貯金生活あるいは年金、公的扶助を受けていた場合)

→ 確定申告は不要だが、住民税の申告は必要

自立支援医療や障害福祉サービス、公的扶助を受けている場合、あるいは公営住宅を利用する場合には、申告に基づいた自治体の決定が必要なので、住民税の申告を必ず済ませよう。

障害年金を受給している場合、障害年金は非課税の収入であるため、障害年金の収入だけならば、収入がゼロということになるので、他に収入がなければ確定申告は不要である。

住んでいる自治体によって違いがあると思うが、収入ゼロで住民税の申告を行う場合は、その事情を説明する必要があるはずである。(後述)

2.会社での就労で給与収入だけがあり、会社で年末調整を行って税金が戻っている場合

→ 確定申告も、住民税の申告も不要

ただし、還付申告の対象になる場合(年途中の退職の場合、医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税など)を適用したい場合)は、確定申告を行う。また、事情があって確定申告の段階で障害者控除を適用する場合も、確定申告を行う。(この場合、要注意事項がある:後述)

3.給与所得以外の、事業収入や雑収入などがある場合

自営業や個人事業主の人たちは、収入と必要経費を自分で計算して申告するので、収支の裏付け(帳簿など)をとっておいた上で、確定申告を行う必要がある。また、副業で雑収入がある場合も、必要経費を計上できるので、帳簿をつけておいて確定申告をしたほうが良い。
この場合、住民税の申告は必要ない。

これらの他にも多くのパターンがあるかと思うが、収入ゼロの場合以外で、何らかの収入がある場合には、収支が赤字であっても確定申告をしておくことを基本お勧めする。

精神障害者ならではの確定申告の留意点

会社に勤務していて給与収入がある場合、かつ障害者手帳を保持していて障害者控除を適用する場合、住民税を徴収するための情報が勤務する会社に送付される過程で、障害者控除を受けていることが会社に知られることになり、不利益が想定できるので、注意したい。
したがって、障がいを開示しないで、クローズドで就労している場合、障害者控除の適用は原則NGである。
オープン就労の場合はいうまでもなく、障害者控除を堂々と適用できる。

ここでは、確定申告書の書き方を説明する。
例として、事業収入もしくは給与収入と、加えて雑収入がある人が、医療費控除と社会保険料控除、障害者控除を適用するケースを想定する。

収入金額欄には、必要経費を引く前の純粋な収入金額(売上金額)、あるいは源泉徴収票に記載されたままの金額を記入する。このサンプルケースでは、個人事業主などの事業収入、もしくは会社員の給与収入が150万円ほどあり、広告収入などの雑収入が1万円ある。

※ 本例では事業収入・給与収入ともに金額の記載をしたが、実際には、いずれか一方のみの記載をすることになる。

所得金額欄には、受け取った収入金額から必要経費を差し引いた金額を記入する。給与収入の場合は、算式を当てはめて算出された金額を転記する。事業所得が赤字だった場合の対応は本稿では触れないが、雑所得が赤字だった場合は、所得金額はマイナスにはならずに、ゼロとなる。

控除金額であるが、医療費控除を適用するためには、次のフォームに明細を記入して提出する必要がある(2017年分から、領収書の添付は不要なかわりに、明細の作成が必要になった)。

社会保険料控除は、支払った分を全額記載する。
障害者控除、基礎控除の欄ももれなく記入しよう。障害者控除は、本人はもちろん、扶養している家族が障害者の場合も適用が可能であるので、忘れずに。(本例は単身世帯の場合)

このサンプルケースの場合、所得金額から控除金額を差し引くとゼロとなるため、所得税は発生しない。(ただし、金額によっては、住民税の対象になる場合がある。)
障害者の場合(寡婦・寡夫を含む)、所得金額が125万円以下の場合は住民税が均等割を含めて非課税となり、自立支援医療などの医療費助成や福祉サービスの利用など自己負担額が少なくなるし、臨時福祉給付金や各種福祉手当の対象にもなりうる。

住民税申告の留意点

何らかの収入があるなどで、大半のケースでは所得税の確定申告を行うのが一般的だと思うが、確定申告の対象にならない場合は、住んでいる市区町村での住民税の申告を行うことになる。

筆者のもとにも、自治体から住民税の申告書が送付されてきた。ただし、今回は税務署に確定申告書を提出したので、住民税の申告書は使用しなかった。

住民税の申告は、申告をする年の1月1日に住んでいる自治体で行う。
次の図が、住民税の申告要非を判定するものであるが、控除を追加する場合や、収入がなくとも国民健康保険に加入していたり、前述した行政サービスを受けるための非課税の決定を得る必要がある場合には、申告が必要である。

住民税の申告書は自治体によって若干様式・体裁が違うかもしれないが、所得税の確定申告書と記載項目は一緒である。
所得税と住民税とは、若干控除金額が異なるために、所得税がゼロであっても住民税が課税される場合がある。節税するためには、自分に適用できる控除を最大限適用することだが、先ほど申し上げた障害者控除は、会社にばれる可能性があるので注意されたい。

筆者が現在住んでいる自治体の場合、収入がなかった場合、生活費の原資を聞かれる。
雇用保険、労災保険、障害年金の有無や、貯金や生活保護(公的扶助)のことなど、結構細かく聞かれる。働いていない場合、税金を納付しないことになるので、働けない場合、その辺のチェックをしっかりと行おうということだろう。

住民税特別徴収額の通知書が会社に届く

確定申告や住民税の申告の結果、毎年6月頃に住民税の決定が行われ、課税証明書の取得が可能となるが、同時に、勤めている会社にも住民税特別徴収額の通知書という細長い紙片が自治体から会社に届く。
住民税は原則給与から徴収されるので、会社の給与計算担当者には自分の収入の内容が知られうる。

確定申告で、給与収入以外の所得について、普通徴収(自分で納付する方法)を選択しないと、全ての収入に対する住民税が会社に通知され、給与から天引きの対象になってしまう。
障がいをクローズドにしている場合、この通知書の内容から障害者控除(他にも、寡婦・寡夫控除の発覚など考えられる)が発覚することになるので、注意したい。

以下の例は、筆者が稼げていたころの昔の例であるが、障害者控除を確定申告の段階で適用し、住民税額の変更が発生したケースである。
最初の図では、障害者控除が適用されておらず、控除額はゼロである。

次の図が、変更後のものである。障害者控除が適用された分、住民税がこの例の場合では22,100円減少した。本人該当区分で、「その他障害者」という欄に*が入っている。これで、筆者もかつて大変な思いをしたものである。

結果的に、所得や控除の内容を会社に知られたくない場合は、控除の適用する・しないを慎重に検討して、自身で判断されたい。
確定申告も住民税の申告も基本は自己「申告」であるので、申告自体はもれなく行うようにしたい。